幻の連立構想が出たあの党首会談(10月30日)。その時、田原はここにいた。3年ぶりに訪れた北朝鮮。あの大物高官(日朝国交正常化交渉担当 ソン・イルホ大使)にも田原はいつもの調子で―。(田原)「再調査の行動をしてみる用意はある?」(ソン)「条件が整ったら。」(田原)「はい、もう1回!覚悟はある?」(ソン)「あります。」そして拉致問題で重大証言を得た。日本は今、“圧力”の安倍外交から“対話”の福田外交へ。拉致は、そして核はどうなる?4人が緊急集結。今後の日朝関係がここから見える―。
*北朝鮮の最高人民会議常任委員会 楊亨燮(ヤン・ヒョンソプ)副委員長にインタビューした後の続き
【田原総一朗氏】VTR
「えー、ここが朝鮮の外務省です。これから日朝国交正常化大使のソン・イルホさんに会います。今回の取材の一番の中心がこのソン・イルホさんです。」
【田原総一朗氏】(北朝鮮外務省にて 10月31日)
「どうも失礼します。」
【通訳】
「初めまして。」
ソン大使が驚きの重大証言 進展は?米朝関係
【田原総一朗氏】VTR
「よろしくお願いします。アメリカが姿勢を変えました。おそらく今年中に朝鮮をテロ支援国家から解除、外すということ、日本ではたぶんそうなるだろうと見られています。アメリカがこんなに大きく態度が変わったのは、これどうとらえていらっしゃいますか?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「私は朝米担当者ではありません。しかし明白なことは、我が国はミサイルを発射したし核実験を行いました。このような背景には結局アメリカの姿勢があります。アメリカは我が国を“悪の枢軸”と決め付けたのです。『核で先制攻撃をする』とも言いました。我々は生き抜かなければなりません。だから正当防衛をしたのです。
今、朝米関係は進展しつつあります。田原さんのおっしゃったように何故こうなったかということですが、ミサイル発射や核実験に関する我々の立場、そうしなければならなかった経緯についてアメリカが悟ったのではないでしょうか。それが原因ではないかと思います。」
【田原総一朗氏】
「日本の噂では、来年の春、相当早く『ライス長官が訪朝する』という噂も飛んでいます。で、おそらく、もしかするとブッシュ大統領が辞めるまで、来年いっぱいです、今、米朝国交正常化も進むんじゃないか?と。ものすごいスピードでアメリカがこの朝鮮に近寄って、何ででしょうねえ?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「報道されているように、朝米関係に進展があるのは事実です。これは周辺諸国からも歓迎されています。」
要求する環境とは?
【田原総一朗氏】
「まぁ担当じゃないから、それ以上聞けない。ところで今度は日朝の問題ですね。9月にウランバートルで開かれた第2回日朝国交正常化作業部会で、朝鮮側がこの日本は今、環境を整えてないと。もっと言えば、日朝関係は非常に良くないと。その環境を整え、それから信頼感が構築されればこの議論をもっと進める。さらに言えば、その先にはちょっと再調査をやってもいいってことだと思いますが。それを聞きたいんですが、環境を整えるとはどういうことですか?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「朝日平壌宣言が発表されて我々は拉致問題を認め、誠意と努力を尽くしました。生存者は帰国させ、死亡者はその結果を報告しました。我々はやるべきことはやりました。それなのに平壌宣言が発表される前よりも関係は悪くなったのです。
2回目の小泉総理の平壌訪問以降、我々は再調査を行いました。しかし再調査の結果が明らかになればなるほど、日本の反応はかえって悪くなったのです。誠意と努力を示すほど、我が共和国に対する非難だけが激しくなりました。」
【田原総一朗氏】
「さっきの結果を報告したってのは、つまり日本側が言っている13人、拉致被害者13人のうち5人は帰したと、8人については死亡していると、こういうことですね?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「そうです。」
【田原総一朗氏】
「8人について、生存者はいないとこういうことですか?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「その通りです。核実験を口実に共和国に対する国連の制裁に同調した上、独自の制裁措置までとっています。制裁しておいて、我々に対して再調査をしろと言い続けています。言わば手と足を縛っておいて動けと言うのと同じです。だからモンゴルでは手足の縛りを外してくれ、外してくれないと動けないと言いました。」
【田原総一朗氏】
「手足を縛るとか解くという細かいオペレーションの問題は私はあまり興味がない。で、本音を今日はお聞きしたいんで。例えば日本が北朝鮮に対し朝鮮に対してこの環境を整えてない、これじゃとっても動けない、という項目を挙げてください。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「まず過去の清算を始めなければなりません。二つ目は制裁措置をすべて解かないといけません。三つ目は朝鮮総連は同じ民族だし、堂々とした海外同胞の組織だから、総連が自由に活動できるように保障をしてくれなければなりません。最小限、朝鮮総連の建物の売却問題や万景峰92号の入港禁止など、これらを解除しないといけない。」
どう評価?福田総理
【田原総一朗氏】
「さて問題は福田総理が選挙の時、総裁選挙の時にハッキリとこの拉致問題は自分の内閣中にけりをつけると言ってます。さらに日朝関係の関係を良くするため、打開するには今一番良いチャンスだとも言ってます。要するに日本はハッキリ福田首相が政策を転換すると言ってる。どうですか?ソン・イルホさん。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「拉致被害者は死亡しているのに、生還させなければ何もできないというふうに解決できないような前提条件をつけたら、政策を転換すると表明をしてもそれは口先だけのことに過ぎません。」
再調査は?「死亡」8人
【田原総一朗氏】
「だけどもし環境が整えばもう一回再調査はしてもいい、こういう気持ちですか?そこを一番聞きたい。」
【通訳】
「今ここで私の立場は表明しない。」
【田原総一朗氏】
「いやいや、分かる。だけど、もしもね・・。」
【通訳】
「外交ルートで協議してみる。」
【田原総一朗氏】
「外交はどうでもいいの。あのね、さっき日本の世論が大事だとおっしゃったでしょ?だからそれは私は公式の立場としては言えないけども、それはきっと条件が整えば再調査ってことはあるでしょう?ってなことをおっしゃっていただきたい。」
【通訳】
「いずれにしても我々が身動きできるように、身動きがとれるように環境が作られれば考えてみる。」
【田原総一朗氏】
「だから、分かった。身動きができるように環境を整えたら、それはどうするんだ?」
【通訳】
「私たちも行動してみる用意はあります。」
【田原総一朗氏】
「うん、行動してみる用意はある、うん。繰り返し言うけど・・。」
【通訳】
「8人ははっきりと死亡しています。」
【田原総一朗氏】
「そう、8人は死んでるけども、それ以外の人について再調査の行動をしてみる用意はある?」
【通訳】
「条件が整えば、です。」
【田原総一朗氏】
「もちろん。だから整えば。はい、もう一回。再調査してみる覚悟がある?」
【通訳】
「はい、その覚悟はあります。」
【田原総一朗氏】
「ある。その行動・・。」
【通訳】
「だから三つの条件・・。」
【田原総一朗氏】
「分かった。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「我々は日本側から12名の拉致被害者について調査を依頼されました。しかし、それについてはすべて解明したので今の状況では存在しません。」
【田原総一朗氏】
「それ以外の人間について、日本人、もし居るかどうか、その調査が条件が整えばやると?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「そうです。」
他にいない?拉致被害者
【田原総一朗氏】
「OK。だから全部が計済みではない?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「残りの人が拉致被害者なのか、自分から入国したのかはまだ確認されていません。問題は日本のマスコミがあの人もこの人も拉致されたと報道していることで、これは信用できない。その中には日本で死んだ人もいるからです。」
どう考える?「遺骨」問題
【田原総一朗氏】
「ところでもう一つ。薮中、外務省のね、局長が朝鮮へやって来て、で、横田めぐみさんの骨だという遺骨を持って帰りました。ところがその日本の調査では、これは偽物であると、本物じゃないという結論になりました。
その点についてですが、実はとっても権威のあるイギリスの“ネーチャー”っていう雑誌があります。ご存じですね?そのネーチャーで、この横田めぐみさんの骨というものを鑑定した帝京大学の吉井富雄という講師がこのネーチャーのインタビューに答えて、『実はこれは横田めぐみさんの骨じゃないと断定したわけではない』と言ってます。彼はさらに『火葬された遺骨の鑑定経験はなかった』と、さらに『遺骨に他人の汗とか何かで汚染されていた可能性もある』と言ってる。非常に曖昧なことを言ってるわけね。
だから改めて、アメリカは最近この異常に高温で焼いた遺骨の鑑定ができる新しい仕掛けを仕組みを開発したそうです。アメリカにもう一回ね、別にアメリカと日本、同盟じゃないんですよ、そういう意味じゃ。一番あそこが進んでいるから、頼んでもう一回鑑定をするということはどうですか?」
第三国・米で再鑑定は?
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「これは非常に重要な問題です。一回死んだ人をもう一度殺すことになりかねない。かなり慎重にするべきです。何故なら、日本から『偽物だ』という鑑定書を受け取りました。それを我々は北朝鮮のDNAの専門家に再鑑定させました。日本の鑑定書の内容はまったく辻褄が合わず非科学的だということが分かりました。まさに吉井という講師の言った通りです。
田原さんは『アメリカに鑑定を依頼する』と言いましたが、その前に解明しないといけない問題があります。DNA鑑定は非常に敏感なことですから、外部の影響を完全に遮断しないといけません。だから徹底した立ち会いが必要です。」
【田原総一朗氏】
「私は日本が正しいと言ってないの。だからそういう疑問が出てきたんだからアメリカに再鑑定させたらどうかと。で、もしその時に、朝鮮と日本が立ち会えばいい。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「それは横田めぐみの夫に聞くべき問題だ。私ソン・イルホが決めることではない。今は遺骨を返してくれと言ってる。」
【田原総一朗氏】
「そういう難しいことじゃなくて、とにかく日本と朝鮮の間の曖昧な問題をスッキリさせた方がいいの。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「やるのはいいが夫の許可をもらわないといけないでしょ。日本は誰が遺骨に触ったのかをハッキリさせないといけない。3ヶ所で遺骨を鑑定したとは言っても、鑑定者のサインもないし、誰が立ち会ったのかも分からないし、不透明な部分が多いでしょ。」
【田原総一朗氏】
「だから不透明をなくすために、もう一回改めてアメリカで鑑定したらどうかと。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「そのためには『この遺骨は偽物だ』と言ってサインした鑑定者がいないとダメでしょ。サインした人がいないでしょう?」
【田原総一朗氏】
「そういうのはね、私あまり賛成しないの、そういう詰め方は。つまりそれは、チョイ待って、帝京大学の吉井富雄さんは、日本では『偽物だ』と言ったわけですよ。ねっ、言ったわけ。で、政府の官房長官や何かも『偽物だ』と言ってるわけ。細田官房長官や何かも。
だけど、ネーチャーにこういう吉井さんが極めて曖昧な表現したんで、私は怪しいと思ってるわけだ。だから、ねっ、だからその点では私はむしろソン・イルホさんに近いと思ってる、立場は。だからアメリカでもう一回、キチンと鑑定した方がいいんじゃないかと。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「鑑定うんぬんを言う前に『偽物だ』と言ってるんなら持ち主に返すべきでしょう?現状のまま返すべきでしょう?」
【田原総一朗氏】
「ねぇ、何でそんなこだわるんですか?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「何故なら本物を渡したのに『偽物だ』と言うから、我々も日本に対してその責任を問いたいのです。」
【田原総一朗氏】
「あのねぇ、だから鑑定をして、アメリカで鑑定してね、これはやっぱり本物だとなれば本物でいいじゃないですか。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「とにかく持ち主に返すべきです。誰が遺骨に触ったのかを鑑定してみたい。」
【田原総一朗氏】
「もっと言えば吉井さんはね、マスコミインタビューに答えません。たぶん政府と警察が答えるなと言ってるんだと思う。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「だから彼は急に大学から警視庁に移ったんでしょ?」
【田原総一朗氏】
「だから吉井さんを追っかけるんじゃなくて、アメリカでもう一回鑑定した方が早いじゃないかと言ってるわけ。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「アメリカに行くかどうか決める前に我々に返すべきです。私たちの物なんですから。これは私たちがやるべきことです。」
【田原総一朗氏】
「そんなことはねぇ、どうぞ外務省とやってください。私は動けない。だから私はむしろ、やっぱりそのね、アメリカでハッキリした鑑定をした方がいいと、むしろお勧めしてるわけ。だからその手続きが、一回返すか戻すかどうするかは、それはねぇ、外務省とどうぞやってください。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「横田めぐみは死んでいるのに『生きている』と嘘を言い続けているから、横田めぐみさんの両親も生きているんだと思い込み騙されているんでしょ?」
【田原総一朗氏】
「だから・・。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「自分たちの嘘を証明するために遺骨を『偽物だ』と言ってるっ!」
【田原総一朗氏】
「悪いけども、言っちゃ悪いけども、それは死を抹殺だと私は言いたい。そういう具体的なことはねぇ、やっているのは外務省とゆっくりおやりになればいい。で、私はここでね、やっぱりハッキリさせるためにアメリカで鑑定した方がいいと思うと。そのためには横田めぐみさんの夫という人のその承認もいるだろう、あるいは親の承認もいるだろう、んなもんは取り付ければいいと言ってるんですよ。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「それは良いことです。必要です。」
【田原総一朗氏】
「一回朝鮮へ返すのもね、一回朝鮮へ返すのも返さないのも、それは交渉してくださいと。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「そうしようとしてもう何年ですか?2004年から3年、日本に保管されているが、その保管状態が正確に確認されないといけない。」
【田原総一朗氏】
「そういうことは実際にある時に検討してください。とにかく第三国で、私はアメリカが日米同盟からじゃなくて一番進んでいるから、そういう国で再鑑定するのがいいと思うけど、これは賛成でしょ?手続きはいい、間のことは色々・・。」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「それは元々は我々から提案したことです。信用できないなら第三国で再鑑定しようと。我々が提案したら日本が反対したんでしょ!」
【田原総一朗氏】
「分かった、はい、分かった。それからもう一回最後に念を押したいと。つまり条件を、ねっ、福田さんが整えればね、調査はやる?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「用意がある。」(日本語で話す)
【田原総一朗氏】
「する?やると?」
【日朝国交正常化交渉担当・宋日昊(ソン・イルホ)大使】
「今の時点では調査をする用意があると・・。」
【アナウンサー・寺崎貴司さん】(スタジオにて)
「まぁあの、注目される発言があったわけなんですけども、北朝鮮が横田めぐみさんの遺骨だとして日本に渡した骨の問題、で、この骨についてソン・イルホ大使は『第三国で再鑑定するよう提案したが日本政府が反対した』と注目される発言をしています。
そこでこの発言をどう受け止めているのか、当事者である横田夫妻にお話を聞きました。こちらその答えなんですけれども。横田早紀江さんは、
「遺骨」の第三国鑑定について 横田早紀江さんのコメント(今月6日)
・私は(めぐみが)絶対に生きていると思います。
・日本は毅然としていれば良いと思います。
・拉致問題が解決するまできちんと『遺骨』をお預かりしておけば良いと思います。
―と答えています。田原さん、お願いします。」
終わり
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